日本即興コメディ協会のブログ

こんな時だからこそ Yes, And (共創的問題解決)で乗り切ろう!

新型コロナウイルス感染症、COVID-19 の影響で、世界的にイベントが中止になり、外出が制限されたり、控えられたりしています。地域経済に目を向けるとその影響で、イベント会場、企画会社、出演者、飲食店など多くの企業や個人事業主の目の前の売上が吹っ飛び、事前に仕入れていた支払いだけが残る惨憺たる状態が日本中で発生しています。当協会もご多分に漏れず、企業イベント支援や学校関連の講演など3月に予定していた仕事がなくなりました。(濃厚接触のないおもしろい研修動画制作支援などぜひお仕事ください!)

 

こんな時だけど良い話もあります

 

東日本大震災が発生し9年が経ったばかりで、当時と現在の状況が比較されることもあります。しかし、今回は(今のところ)公共交通機関がストップしているわけでもなく、停電しているわけでもないので、当時と同じような状況というわけではありません。

 

そういう意味では、濃厚接触を避ければ、それ以外の創意工夫や活動は多くの人が参加しやすく、実現しやすい状況にあります。話題となっている Zoom を中心としたオンライン会議やウェビナーといったオンライン上でのコミュニケーションインフラも比較的簡単に活用可能です。

 

このような状況下で支援の声が聞こえてきています。子ども向けオンライン教材を無償で提供したり、お弁当を安価で届けたりする企業もあります。宮崎県児湯郡新富町での地域の飲食店を支援する取り組みは、その輪を広げていっているようです。

 

飲食店支援へ、町職員らが弁当発注「少しでも役に」, 2020年3月11日、朝日新聞

 

このような取り組みは、経済的に地域の飲食業を助けるとともに、更なる問題解決への呼び水になると期待できます。

 

自然発生的なチーミングと心理的安全性

 

では、今のような緊急事態で、このような助け合いの輪を広げていくには、どのような土壌が必要なのでしょうか。ハーバード大学のチームの心理的安全性研究の第一人者であるエイミー・エドモンドソン教授は彼女の研究対象として、チリで発生したコピアポ鉱山落盤事故の際のコミュニケーションやリーダーシップを例に上げています。

 

世界一硬いといわれる岩盤の下に閉じ込められた33人の鉱山作業員を助け出すのは当初不可能と思われていました。しかし、世界各国から様々な分野のプロフェッショナルが集結し、この難題に当たり、知恵を出し合い、奇跡的に事故から69日後に全員が無事救出されました。エドモンドソン教授は、この複雑で不確実性の高い状況下で、ベターな仕事のやり方を常に考え出しながら、協働して課題に向き合う方法を「チーミング」と呼び、その根幹を「心理的安全性」が支えている、としています。

 

このような共創的に問題解決する場は、自然発生的に構築されている場合があります。

 

  • コミュニケーションのベースが否定的(でも、ですから、できません)ではなく肯定的である
  • リスクを取って新しいことにトライできる
  • 失敗に対する恐怖心が少なく、失敗から学ぶ
  • 何でも言い合える雰囲気がある
  • 強いひとりのリーダーシップではなく、適材適所で個々人が有機的にリーダーシップを発揮している

 

これは、まさにエドモンドソン教授のいう心理的安全性の確保された状態です。このような組織やコミュニティは、災害や現在のような緊急事態に創造的に問題解決に取り組めると考えられています。

 

Yes, And による共創的問題解決

 

しかし、通常我々の多くは、企業や組織など役割や権限がはっきりした組織で活動しています。また、部下になめられてはいけない、自分の存在意義を示す、相手より優秀なことを誇示するために「否定」を使いすぎています。しかし、災害時や今の VUCA と呼ばれる不確実、かつ予想不可能なビジネス環境では、高度なコラボレーション・スキルを持ったメンバーの存在が重要になってきます。それでは、この「高度なコラボレーション」は、どのように構築すれば良いのでしょうか?

 

インプロと呼ばれる即興コメディ/演劇の世界では「Yes, And(イエス・アンド)」というゴールデンルールがあります。Pixar 社はこれを「Plussing(プラッシング)」と名付け、彼らのクリエイティビティの源泉としています。この共創的問題解決の手法は、大きな課題をかかえ、混沌とした共創的に問題を解決していかなければならない今、大きな力を発揮します。

 

Yes, And とは相手のアイデアや意見を一旦まるっと受け取って、肯定的なアイデアや意見を返す、問題解決の手法です。人は無意識的に変化(新奇性のあるもの)に対して否定的な感情を抱くようにできているといわれています。共創的に問題解決が必要な場では、「意識的」に相手の「意見やアイデア」(新奇性)を肯定的に受け取り返す必要があり、頭でわかっていても普段のコミュニケーションの癖で容易にはできないため、そのトレーニングが必要なのです。

 

否定からでは創造的問題解決は生まれない

 

例えば、あなたが地域の緊急の課題を解決していかなければならない担当者だとします。緊急な課題であれば、普段仕事を一緒にしていないメンバーや他の地域からの応援者、ボランティアのメンバーと共に解決を目指します。

 

ここに普段の役割や関係性、そして提案に対し否定から入るようなコミュニケーションを多くのメンバー持ち込んでいたとしたらどうなるでしょうか?マニュアル的で各メンバーの意見に耳を傾けないような場であれば、問題解決には程遠い状態になるでしょう。

 

また、せっかく様々なプロフェッショナルが集まった場であっても「解決策を提案してもどうせ否定される…」という空気が蔓延し、想定外の問題に対処できなくなってしまいます。

 

地域コミュニティに災害や緊急事態に強い Yes, And を

 

今、私達は、地域コミュニティのメンバーとして、個々に持っている能力やリソースを使って助け合う時期にあります。志のあるコミュニティメンバーとして、Yes, And を元に様々な課題に共創的問題解決していきましょう。

 

また、リーダーは、メンバーを信じ、指揮統率を緩め、権限移譲し、そのバランスを取り、全てのメンバーが気兼ねなく意見やアイデアを言い合えるような心理的安全性の高い場を構築する努力をすべきときにあるのではないでしょうか。

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